絵描きとしてよく尋ねられる事

「どうしたら絵が上手くなりますか?」

というのは、絵を描く人なら多くの人が一度は尋ねられる質問だと思います。僕も単純に、「どうやったらあんなに動けるようになるんだろう」とか思いますので、尋ねてくる方の気持ちは分かります。


 とはいえ、それに対するお返事としては

「たくさん描きましょう」

と答えるしかありません。生まれた時から何でもリアルに描ける人はいない訳です。


 ものすごく個性的なタッチを元々持っていて、多くの人がそれを評価してくれる、さらに自分でもその絵で満足してる。そういう稀有な状況に生まれた方なら、絵の練習は必要無いと思います。むしろ練習しない方が良いとさえ思います。

 しかし、多くの人はそうでは無いし、普通「もっと上手くなりたい」と思うでしょう。生きていれば、いろんな人が描いた、いろんな絵を目にします。そのデータが脳に蓄積されていきます。その膨大なデータが脳内で互いに比較され、「好きな絵」「上手な絵」「自分にも描けそうな絵」など、自動的に分類されていきます。

 つまり、絵の練習をしなくても、絵に対する情報はどんどん増えていきます。その状態でおもむろに絵を描くと、脳にある「上手な絵」と、今まさに自分が描いた「自分の絵」にものすごい差がある事に気がつきます。

 当然です。脳にあるものを手に伝える練習や、頭に漠然とあるイメージを、頭の中だけでより具体的にする練習が出来ていないからです。「理想のイメージ」を頭で作り、その「理想のイメージ」を手が再現できるように、手を理想的にコントロールできるように、脳を鍛えなければいけないのです。

 

 要は運動の練習と同じだと思います。理屈と感覚を突き詰めて、少しでも理想的な動きに近づけていく作業。


 しかしもう一方で、脳の中にどれだけ素晴らしいイメージを作れるか、というのも重要になってきます。まずそれが無いと、手をどう動かすか、という道筋ができません。それには、とにかく見る事。見せる事。


 人の絵を見る。こういうの好きだな、と感じる物をどんどん取り込んでいく事。また、人に絵を見せる事。何らかの公募展、ネットなどに発表して、他人の絵と比較する、意見をもらうという意味もありますが、「人に見せるんだ」と思う事で、その作品が自分の中で完成だと思える到達点を、より高い所に位置づける、という面もあります。


 よく小学生なんかが、「色を塗ったら失敗するから」という理由で鉛筆の線描きで完成にする場合があります。しかし、マンガのキャラクターなら絶対にペン入れした方が見栄えがするし、さらに色を塗った方が絶対に目を引きます。一人で満足しているなら線描きでもいいのですが、「人に見せて恥ずかしくないものにしたい」と思うのなら、出来る限りの技を注ぎ込むべきなのです。それが、次の作品をより高める事に繋がります。


 やっぱりとにかく描くしかないです。そして、同時進行で考える。どうすればもっとすごいの描けるだろう、どうやったらあの色だせるだろう、どうやったらあの人みたいな絵が描けるだろう。


自分への戒めとして、描いておきます。

 

et.class

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